ミックマック
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2011/11/25
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
幼い頃に父を地雷で失い、大人になってから偶然頭に銃弾を食らった主人公バジルが、それらを作る武器商人たちに仕返しをするというフランスのコメディ映画。監督は「アメリ」で有名なジャン=ピエール・ジュネ。アメリは見たことがないが、この監督の独特の世界観と映像の美しさにまず魅入られてしまった。そして次にストーリーの面白さ、テンポの良さ、極めつけのハッピーエンド、どこを切り取っても素晴らしい映画で、なおかつ映画にしかできないこの尺の長さと練りこみ具合、これぞ映画である!
同時にこの映画は武器や兵器、戦争や権力に対する痛烈な批判にもなっている。大企業の社長たちにホームレスらが「仕返し」するというのは、それだけでなんとも痛快な話ではないか。またこの映画のブラックなユーモアの向こうには、ラストシーンで仲間たちが周到な準備のもとに表現したような、圧倒的な数の「ただ黙って撃たれる側」が控えている。
ポトラッチを解釈する人類学がわれわれに教えるのは、力を持たないものが力を持っていなければいないほど、その潜勢力(puissance)は強いものとなっていくということだ。何も言えず、打ちひしがれ、ただ朽ちていく存在による、低すぎて見えないほどの位置からの強烈なアッパーカットは、権力という抑圧と解放の構造の中で、それが映画で表現可能であるという意味において、今日も静かに醸造されている……。