ペルシャ猫を誰も知らない

ペルシャ猫を誰も知らない [DVD]

ペルシャ猫を誰も知らない [DVD]

 音楽が規制されているイランで若者たちがバンドを組もうと奮闘する物語です。ある程度身近に音楽があったり、音楽をしている人がいる生活をしていて思ったのは、音楽を「続ける」ことのできる人たちはどこかしらに「音楽がなければ死んでしまう」というメンタリティを持っている、ということです。彼らは音楽をあきらめれば警察に追われることも死の危険にさらされることもないのですが、それでも音楽をしなければならない、その理由は合理性とは別のところにあるのではないか、と思いました。「〜〜がなければ死んでしまう」(それは音楽でも映画でも絵でも写真でも金稼ぎでも人を見下すことでも男でも女でも家族でも何でも構いません)がこれほど重要なのは、それがあまりに儚いものであり、取るに足らないものであり、したがってあまりに重要でないものだからで、価値体系とは別のところにある己の欲望に従った結果として破滅が起ころうとも、われわれはそれを目指さずにはいられないのでありました。